じょんしゅう日記

映画や本の感想が中心

心霊スポットの成立

先日、ある映画監督さんに聞いたお話で面白かったのが心霊スポットの成立に関するものだ。その監督さんはホラー映画の取材で心霊スポットを回っていたそうで、その際に知ったという。どのようなものかというと、

昭和期日本の話だが、ある神社に一人の巫女がいた。巫女は神子である。その巫女は第2次大戦中、地域の住民達を鼓舞していた。しかし、周知の通り日本は戦争に負けた。地域住民達は巫女を“嘘つき”であるとして蔑み始めた。当然神社に通う人もほとんどいなくなってしまう。しかし、神社の者とて生活をせねばならない。この巫女は売春婦となった。夜になると、地域の男達は神社に通って巫女と関係を持ち、お金を渡した。こうして巫女は何年も何年も売春婦をやりながら生計を立てていたのだが、ある日この神社に侵入した何者か(賽銭泥棒か何かだろうか)の手にかかり、殺されてしまう。当然、この殺人事件と売春には何の繋がりも無い。しかし、巫女と関係を持った男達は、この巫女の死に対して、えも言われぬ罪悪感、うしろめたさを感じたという。ある晩、その地域の男が一人、神社の前を通った。その時、何か声のようなものが聴こえてきたのだという。その男はかつて巫女と交わった者の一人だ。もしかしたら猫の鳴き声だったのかもしれない。だが、巫女の死に何か奇妙なうしろめたさを感じていたその男は、死んだ巫女の声だと思い込んだ。それが地域の人々に伝わる。そして、いつの間にかその声は死んだ巫女の声と信じられるようになり、その寂れた神社は心霊スポットとなった。

という具合である。細かいところは違っているかもしれないが、大体合っていると思う。私は幽霊の類や超常現象などは、実感として全くピンと来ない。遭遇したことがないし、なんとも言えないという感じだ。
しかし、上に書いた巫女の話を聞いたときは、結構感じるものがあった。私は心霊スポットそのものよりも、その心霊スポットがいかにして心霊スポットと呼ばれるようになったのかという話の方がピンとくるようだ。今まで心霊云々がいまいちよくわからなかった私も、別の形で心霊まわりの話に興味が持てるようになるのかもしれない。