読書メモ:『ハダカデバネズミ』
吉田重人、岡ノ谷一夫『ハダカデバネズミ―女王・兵隊・ふとん係』岩波書店(2008)
まだまだ研究がそれほど蓄積されていないようだが、ハダカデバネズミが鳴き声を使って階級を確認しているのではないか、という話や、地中のトンネル内の環境に適応した聴覚や鳴き声の特性を有しているのではないかという話など面白かった。
あるいは大学でのハダカデバネズミの飼育、研究の際に、停電や学園祭といったものが心配の種になるという話も興味深かった。停電が困るというのはわかるが、バンドのライブの際の大音量や振動が、学園祭の時期の寒さなどと共に、ハダカデバネズミにとっては危険でさえあるというのはなるほどと思った。「一部のデバは気が立って殺し合いを始める」、などということもあるそうだ。私も学園祭のライブ演奏に対してうるさいなと思うことはあるし、それによって読書が出来ないなどということはあり得るが、文学部などの場合は基本的には単に学校に行かなければよいだけである。あるいは音楽系の専攻であれば(バンドのライブほどの騒ぎではないとはいえ)毎日それなりに響く音が鳴っているわけで、いつの間にかそれが普通になったりもする。しかし研究室での飼育や実験を行う生物学などではそれらとは全く事情が異なる。学園祭の時にそんな苦労をしていたのかと、私には馴染みのない学園祭への視線が知れたのは面白かった。
本書の特設サイトではハダカデバネズミの音声や動画などを視聴できる。
http://www.iwanami.co.jp/moreinfo/0074910/
ハダカデバネズミ―女王・兵隊・ふとん係 (岩波科学ライブラリー 生きもの)
- 作者: 吉田重人,岡ノ谷一夫
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2008/11/06
- メディア: 単行本
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色々な音を真似する鳥
恐竜の声
恐竜の鳴き声と言われると何となくイメージは出来るが、
それは映画などを通して聴いたものだ。
ではその映画での恐竜の鳴き声は何であの音なのだろう。
うちにある『大人のための「恐竜学」』という新書に鳴き声の話が少し書いてあった。
その中で、パラサウロロフスの鳴き声に関する研究が紹介されており、
検索してみたところパラサウロロフスの鳴き声を再現したものが聴けるサイトもあった。
白亜紀の声〜パラサウロロフスの歌〜
パラサウロロフスの場合、特徴的なトサカを持っている。
そのトサカの構造を調べて、その構造では音がいかに鳴るのかを研究したようだ。
追記:YouTubeにもパラサウロロフスの声の再現音源がある。
上記のサイトにも書いてあるが復元されたパラサウロロフスの鳴き声は管楽器のような音だ。ファゴットみたい。
アンリ・デュティユー《サラバンドとコルテージュ》を思い出したよ。
同じ本の中で『ジュラシックパーク』での恐竜の鳴き声に関する記事が紹介されていた。
ティラノサウルスの声はジャックラッセルテリアの声、
ヴェロキラプトルのうめき声は亀の交尾の音、
その他複数のシーンで馬の声も使っているとか。
『ジュラシック・パーク』の恐竜のうなり声は、カメの交尾の音を録音して作られていた! - シネマトゥデイ
もっと最近の恐竜映画だとどうなってるのだろう。
あとで調べてみようかな。
ところで恐竜って何故鳴くのか。
そもそもほんとに鳴いたのか。
色々気になる。
最近入手または読んだ
- 作者: コリン・エラード,Colin Ellard,濱野智史(補論),渡会圭子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2010/04/22
- メディア: 単行本
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原題は"YOU ARE HERE: Why We Can Find Our Way to the Moon, but Get Lost in the Mall"。
動物や人はどのように空間を認識しているのか。そして、人の空間認知システムが私たちが生きる空間とどのように関わるのか。そんなことが書いてある認知科学の本。
前半はアリや伝書鳩の話と人間の話。アリは自らの現在地情報を把握可能だが、人間はそうではない。人間はアボリジニーなどでも無い限りそんな能力は持っておらず、空間を頭の中でつくり直して理解している。
後半はそんな人間と、住まいや都市、サイバースペースなどの生活空間との関わり。例えば、都市の章ではコルビュジェの都市計画の失敗例や、ジェイコブスの言葉などに触れながら、人間の空間認知システムや動き方と都市計画の関わり、人々を魅了する都市のポイントを探る。
わりと面白い。補論として濱野智史氏による論考が載っており、そちらも(の方が)面白い。
図説科学・技術の歴史 下 約1600-1900年頃―ピラミッドから進化論まで
- 作者: 平田寛
- 出版社/メーカー: 朝倉書店
- 発売日: 1985/06
- メディア: 単行本
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下巻はヨーロッパの科学革命(「科学革命の形成」)、例えばデカルトの機械的自然観、ガリレイの発明・発見、ケプラーの『新天文学』、フェルマーの定理の話などから始まる。その後、「ニュートンを中心に」、「啓蒙思想の時代」、「産業革命の時代」、「20世紀の科学・技術へむかって」と続く。出版は1985年であるが、しかし最後の章のタイトルを見て何となくわかるように、19世紀まで(電話・タイプライター・ミシンなど)で終わっている。
また、上にデカルト、ガリレイ…と羅列したが、この本は理論家や発明家、つまり人を中心に記述してある。科学者列伝・発明家列伝のような性格もあると言える。ただし、著者としては、そうした偉人は讃えられるべきではあるが、「もっと強調したいのは、残念ながら歴史の舞台にはあらわれなかった無数の科学・技術者や科学・技術の愛好家たちの研究と努力を忘れてはならないという点」*1だそうである。
さてこれは図説である。各科学・技術者とその功績に関する説明もいいのだが、何より図版が面白い。こういう発明品の図や理論の模式図の版画などは見てるだけで楽しい。
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