じょんしゅう日記

映画や本の感想が中心

読み物として面白い落語本

文庫化されたのを機に、三遊亭円丈『師匠、御乱心!』を読んだ。

1970年代末に起きた落語協会分裂騒動。後の時代に生まれた者からするといまいちよくわからない騒動なのだが、この本は、現在の落語(界)のあり方にも影響を与えているその出来事の内実を、小説のかたちをとって描いている。

あくまでも一落語家の立場から描かれた物語であり、この騒動に対する別の見方や描き方はあるだろう。だがそれは当然のこと。むしろ、あくまでも一落語家の視点を貫いているからこその独特の説得力がある。圓生の弟子として、騒動によって人生を大きく左右されたと言える若き落語家が、何としてもこの騒動の顛末を伝えようとした情熱(情念?)のようなものを感じることができる本であり、しかも文章が冴えていて読み物として面白い本だった。

 

師匠、御乱心! (小学館文庫)

師匠、御乱心! (小学館文庫)